鋭針と鈍針どちらが良いか?

しわやくぼみの修正に使用されるヒアルロン酸ですが、注入用の針には色々な種類があります。もちろん当院でも多数の注入針を用意して、適材適所に使い分けています。

注入針は、まず先端の形状の違いにより鋭針(えいしん)と鈍針(どんしん)に分類されます。鋭針は、針と聞いたときに通常思い浮かべる先端のとがった針のことです。鈍針は先のとがっていないカニューレ状の針のことです。メーカーによって色々な呼称がありますが、マジックニードルとかマイクロカニューレ、ミラーカニューレなどと呼ばれています。鋭針と鈍針のどちらを使用するかは、施術者の好みによって違ってきますが、最近は部位に応じて鈍針を使用するケースが増えており、鋭針のみで注入を行う医師は少ないのではないかと思います。

鈍針を使用するメリットとは?

鈍針を使用するメリットはいくつかありますが、以下の2点が主なものです。

  • ・皮下出血しにくい。
  • ・血管内に注入しにくい。
両方とも大切なポイントですが、前者は仮に生じても大事には至りませんが、後者は重大な副作用を生じるため特に重要です。ヒアルロン酸注射は元々リスクの高い治療ではありませんが、極めて稀に血管内にヒアルロン酸が入ってしまい血管が詰まることで皮膚壊死や失明などの重篤な副作用が生じた事例が報告されています。鈍針は血管に刺さりにくいため、そういったリスクを極力最小化してくれます。
マジックニードル

ただし、鈍針は決して万能ではなく、良い面もあれば悪い面もあります。それを理解した上で使用することが大切です。ちなみに2015年に当院を訪問していただいたヒアルロン酸注入術の世界的権威であるシンガポールのワッフルズ・ウー先生は、「私は鈍針を使用していない。」と明言されておりました。その理由は、鈍針だからと言って内出血しないわけではないし、細かく注入しにくいからだということでした。鈍針は穴がカニューレの先端ではなく横についているため、針の先端とヒアルロン酸が注入される位置に若干のズレがあり、そこが細かく注入しにくいというウー先生はお考えになったのでしょう。
鈍針イメージ

鈍針を使用しても絶対に内出血しないわけではない。

ウー先生は「鈍針を使用したとしても内出血しないわけではない」ともおっしゃていました。これはどういうことでしょうか?元々、鈍針(カニューレ針)は、内出血を防ぐため、あるいは血管内にヒアルロン酸が入るのを防ぐために使用され始めました。もちろんこれはこれで素晴らしい進歩なのですが、実際には鈍針だからと言って内出血が全く起こらないわけではありません。と言うのも、先がとがっていない鈍針はそのままでは皮膚を刺入できないので、一回り大きな径の鋭針で一旦皮膚を刺入し鈍針を挿入できる穴を作らければなりません。例えば、27Gの鈍針を使用する際にはあらかじめ26Gの鋭針(27Gよりわずかに太い)で皮膚を刺入して通り道を作っておかなくてはいけません。このときに内出血を作ってしまう可能性があるのです。また、高齢者の方は血管壁がもろいので、鈍針の先端が血管にあたって破れてしまうこともあります。もちろん単純に鋭針のみでヒアルロン酸を注射していくことに比べればかなり内出血しにくいとは言えます。ちなみに私は内出血を極力避けるため、まず静脈透視装置を使用して血管の位置を確認してから施注を行うようにしています。ですのでさらに内出血のリスクを下げることができています。

鈍針の欠点とは?

ウー先生が言及されたこと以外にも、鈍針の欠点として、皮内に注入できないことが挙げられます。鈍針を使った場合、皮下の脂肪層にしか針は通過できません。しかし、ヒアルロン酸を皮内に注射したいという状況も多々あります。このような場合は鋭針を使用するしかありません。

さらに、もう1つ鈍針の欠点として、垂直に刺せないということが挙げられます。鈍針は同一レイヤー内を皮膚面にほぼ平行にしか挿入できません。そのため、ヒアルロン酸は扇状にしか注入することができません。しかし、なるべく少ない量で盛り上げたいようなときには扇状に面で注入するのではなく、柱状に垂直に注入した方が良いのです。柱状に注入するのは鋭針でなければできません。

以上のように鈍針にも長所短所があることが理解いただけましたでしょうか?

ヒアルロン酸注射、どうするのがベストか?

ではどのようにヒアルロン酸注入を行ったら良いのでしょうか?

これには医師の好みも反映されるので、何が正解というのはないと思います。現在私がベストと思っているやり方は、鈍針と鋭針の長所短所を踏まえて適宜組み合わせる方法です。例えば、法令線の皮下には太い血管が走っていてこの血管が閉塞すると鼻の皮膚が壊死を起こします。そのようなリスクを回避するため、この部分の皮下にヒアルロン酸を注入する際には鈍針を使用します。皮下への注入だけだともう少し足りないというときには皮内に鋭針を使ってヒアルロン酸を注入します。皮内に太い血管はないので鋭針を使っても血管に詰まることはありません。では、皮下には注入せずに鋭針を使って皮内だけに注入してはどうでしょうか?この方法だと、浅いところにたくさんのヒアルロン酸が入ることになるので、見た目の自然さが損なわれる可能性があります。私の経験上、おおむね皮下に注入して、微調整程度の量を皮内に注入した方が絶対に仕上がりがきれいです。そのため、どちらか一方のみ使用するのではなく、両者の特性を理解した上で、適宜組み合わせて使うことが最善であろうと考えています。