眉間のボトックス注射

眉間のボトックス注射はどんな治療?

眉間のしわは表情じわの代表格で、眉頭に「ハ」の字型にできます。真ん中に一本追加されて「小」の字型の場合もあります。眉間のしわは目尻や額など他の表情じわと比べてもかなり深くなりやすいしわで、放っておくととんでもなく深くなります。このしわが深いと常に憂鬱そうに見えたり怒っているようにみえたりするため治療を希望される方は大変多いです。幸いなことに、ボトックス注射を行うと簡単に眉間のしわを改善することができます。このときボトックスが作用する筋肉は皺眉筋(すうびきん)です。
眉間のしわ

皺眉筋について

眉間のしわは皺眉筋という表情筋によって作られます。この筋肉は表情筋の中では非常に強力で、そのため眉間のしわは放っておくと非常に深くなりがちです。眼窩内側縁上部の骨から起始し、眉の中央あたりの皮膚に終始します。この筋肉が収縮すると眉頭を内側下方に寄せて眉間に縦じわを作り、不機嫌な感情を表現します。

治療を開始するタイミングは?

「鉄は熱いうちに打て」ではないですが、「しわは深くなる前に治療せよ」はしわ治療の鉄則です。深く刻まれてしまったたしわを伸ばすのは至難の業です。もちろん深くなってしまってからでも全く治療できないということはありませんが、深くなる前に治療を開始すればそれ以上眉間のしわが悪化することを予防できます。もし眉間のしわがすでに今気になっているなら、治療を開始するタイミングはまさに「今」です。眉間のボトックス注射は効果テキメンなので、こんなことならもっと早くから始めておけば良かったと思うはずです。

眉間のボトックス注射のキモは?

ボトックスを眉間の皺眉筋に効かせて縦じわを改善させること自体は特に難しいことではありません。この施術の要点は、いかに眉間のしわを改善させるかではなく、いかに眉毛下垂眼瞼下垂を避けるかということに集約されます。というのも、皺眉筋のすぐ頭側に前頭筋があり、この筋肉にボトックスが効いてしまうと眉毛内側が下がってきます。そうなると相対的に眉毛の外側が挙がって目が釣りあがったように感じる場合もあります。また、皺眉筋は上まぶたにも近い位置にありますが、まぶたの奥には上眼瞼挙筋というまぶたを開ける筋肉があります。この筋肉にボトックスが効いてしまうとまぶたを開けにくい状態「眼瞼下垂」になります。眉毛下垂も眼瞼下垂も起こって欲しくはないので、眉間のボトックス注射ではこれらの症状をいかに避けるかがポイントとなります。

どのように眉毛下垂や眼瞼下垂を避けるか?

アラガンジャパンが発行しているボトックスビスタの添付文書を見ると、 「骨眼窩上隆起から1cm以上上方に投与すること」 とあります。これは上眼瞼挙筋にボトックスが拡散するのを防ぐ、つまり眼瞼下垂を防ぐためにこのような注意書きになっています。しかし、これはおかしいと言わざるを得ません。確かに1cmも上方に離せば上眼瞼挙筋までボトックスが拡散する可能性はまずなくなります。しかし、この位置には前頭筋があるので、代わりに前頭筋にボトックスが効いてしまいます。もっと言えば、この位置だと、メインに効かせているのは前頭筋の中央下部であって、拡散で皺眉筋に効かせている感じになります。結果、眉間の縦じわの改善も得られる代わりに眉毛下垂も同時に来たします。つまり、眼瞼下垂は起こらないけれども内側の眉毛下垂が生じます。内側の眉毛下垂が起こると、人によっては目つきが悪くなったと思うこともあるでしょう。特に中高年以降の女性はこのように感じるようです。

では、眼瞼下垂も眉毛下垂も同時に避けるにはどのようにしたら良いでしょうか?その答えはアラガンジャパンが医師向けに公開している動画にあります。ちょっと変なことなのですが、実はアラガンジャパンの作っている添付文書と(医師教育用)動画で言っていることが違うのです。動画では、打つポイントによって注射の深さを変えていくことになっています。皺眉筋は眉間中央部では最深部、眼窩内側縁の上部の骨より起始し、外側に向かうにつれて浅い位置を走って眉毛中央部の皮膚に終止します。そのため、眉間中央部では深く、眉毛上縁中央部に位置する一番外側のポイントは少量を確実に皮内に注射するようにします。少量を皮内に注射するのであれば拡散距離は短く、上眼瞼挙筋に効くリスクはかなり低くなります。

ボトックスビスタを発売している会社の添付文書と施注方法の動画で説明していることの内容に齟齬があるというのが、 眉間のボトックス注射の方法に混乱が見られていることの証明ですね。恐らく、行政機関のからみもあり、添付文書は一度作成したら内容を変更するのが容易ではないのだろうと推測します。アラガンジャパンのMRにもこのあたりのことについて質問してみましたが、しっかりと理解している人はほぼいないように思いました。

(※ボトックスビスタに目尻のしわが適応追加になったのを契機に添付文書の記載が変更されました。新しい添付文書では眉間のしわに対してのボトックス注射の方法の記載が正しく改定されていました。)

施術方法

では実際の眉間のボトックス注射というのはどのように行うのでしょうか?施術者の好みにより絶対にこれという注射方法はありませんが、私の額のボトックス注射の要点は以下です。
(1)ボトックスの量は4~16単位くらい。
(2)眉間にしわを寄せてもらってどのあたりまでしわが寄るかを確認し、通常5ポイントをマーキング。眉毛のどれくらい外側の皮膚まで皺眉筋が伸びているかは個人差がかなりあり、眉間にしわを寄せたときの皮膚表面にできるディンプルの位置で確認できます。ボトックスビスタの添付文書上は瞳孔中心線より外側には注射してはいけないことになっているので、これより外側に皺眉筋が伸びている場合はそこまで注射できるか担当医師に確認しましょう。私個人的には瞳孔中心線より外側に注射するのは何の問題もないと思いますが、確実に皮内に注射するという技術が必要なので、添付文書上はそのような記載がされているのは理解できます。
(3)添付文書上は眉間中央で3mm、その1つ外側のポイントで2mm、さらにその1つ外側で1mmの深さで注射するとされていますが、添付文書上の表現は間違えようのない誰が解釈しても同一となる表現がされているだけのことです。皺眉筋の走行から解釈すれば、眉間中央で骨膜の直上、その1つ外側のポイントではその深さの半分、さらにその1つ外側では皮内に注射するのが正確に皺眉筋に作用させることができます。

以上、眉間のボトックス注射について理解が深まりましたでしょうか?とても良い治療なので興味のある方はぜひご相談ください。